最近、1日に数人の胃腸症状の患者さんが来院されます。

 

夏には夏の胃腸炎、冬には冬の胃腸炎が流行し、「嘔吐下痢」、「胃腸風邪」や「感染性胃腸炎」などいくつかの呼び方があります。「感染性」と聞くと少し怖そうですが、ノロウイルスやロタウイルスの「感染」を想定して呼ばれることが多いかもしれません。胃腸炎は、鼻水や咳の「上気道炎」と同じく、一般的なよくあるウイルスが原因であることが大部分で、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどが代表的ではありますが、様々なウイルスが胃腸炎の原因となります。

 

前述のノロ、ロタ、アデノなどは糞便の迅速キットで検査をすることが可能ですが、迅速検査は必ずしも正確とは言えず、診断がついてもいずれも特効薬はなく、公的に定められた出席停止期間もなく、その後の治療方針はあまり変わらないのが現状です。そのため、迅速検査がどうしても必要な状況は限定的であり、当院ではノロ、ロタ、アデノの糞便抗原検査は実施しておりません。ご了承ください。  

 

胃腸炎の主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱などですが、特にご高齢の方や小さいお子さんでは、まれに重症化することもあります。そのため、小さいお子さんについては、生後2か月から公費によるロタウイルスの経口生ワクチンの予防接種を実施しております。  

 

胃腸炎の大部分はウイルスが原因ですので、細菌に対する治療薬である「抗生物質」は効果が期待できず、逆に腸内細菌のバランスを崩して、症状を悪化させる可能性もあります。もちろん、まれに細菌感染が原因の腸炎も起こりえますので、その際は、「抗生物質」での治療が考慮されます。  

 

また、まれに胃腸炎の経過で虫垂炎(一般的に「もうちょう(盲腸」と呼ばれることも)の診断に至る場合もあります。シンプルな胃腸炎では左下腹部に圧痛を認めることがありますが、典型的な虫垂炎では右下腹部に圧痛を認めることがあり、腹部症状の患者さんでは、常に虫垂炎の鑑別を念頭に置く必要があります。  

 

胃腸炎の治療は対症療法がメインとなり、整腸剤の他、嘔気・嘔吐があれば吐き気止めを、下痢がひどければ下痢止めを、発熱があれば解熱剤を、といった処方を検討します。嘔吐や下痢のために脱水や電解質異常をきたさないよう、特にご高齢の方や小さいお子さんでは少量ずつ頻回に水分補給を行いつつ経過をみる必要があります。一般的には、鼻汁や咳の上気道炎と同じように、数日で改善します。    

 

たとえば、子どもさんが寝ているときに嘔吐をすると、布団やパジャマにも吐物がついてしまい、それらは感染源となる可能性もあるので注意して片づけをする必要があり、大変な場合があるかと思います。

 

何よりも手洗いが一番です。  

 

様々な環境面には、目に見えないウィルスが付着しています。それが手について、その手で目、口、鼻などを触ってしまう前に手洗いや手指消毒を行いましょう。